おいしさの故郷 インタビュー #野菜が好きだ

八尾若ごぼう(大阪府八尾市)

大阪府八尾市で育てられる「八尾若ごぼう」は、早春の豊かな香りとシャキシャキとした歯ざわりが特徴です。「矢型」の束で出荷されることから「やーごんぼ」とも呼ばれています。今回は、会報誌「自然といっしょに」2014年6月号で取材した浅井博(あさい・ひろし)さんの八尾若ごぼう栽培をあらためてご紹介します。

八尾若ごぼうは、
河内に春を告げる伝統的な野菜。

取材スタッフ:青々とした葉が畑に広がっていて、春らしい、気持ちのよい風景ですね。

浅井博さん(以下、浅井さん):昨日から露地の若ごぼうの収穫を始めました。先月はハウスの収穫がありましたが、露地のものが出てくると、いよいよ八尾の春が本格化してきたなあと感じますね。あ、お客さんや。すみません、ちょっと待っていてくださいね。

お客さん:若ごぼう、売ってもらえるん?

浅井さん:もちろんです。このまま洗わんで、いいですか?

お客さん:うんええよ。毎日、散歩がてら通るんよ。今日ぐらいがええ頃やなと思って声かけてみた(笑)。畑の人いてくれてよかったわ。おいしいもんね、若ごぼう。

浅井さん:おおきに、ありがとうございました!

取材スタッフ:作業中は、今のように、よく声をかけられるのですか?

浅井さん:ええ、そうですね。通り沿いですし、普通に声かけられますね。朝もひとり、来はりましたよ。

取材スタッフ:地域の方々と農家の方々の近さを強く感じますね。ところで、八尾若ごぼうはこの地方の特産品ですが、いつ頃から栽培されていたのですか?

浅井さん:大正時代とも昭和初期ともいわれています。市の南側に大和川(やまとがわ)が流れているのですが、これがもともとは八尾の中央を流れていたそうなんです。でも、いろいろ不都合があって、江戸時代に、川を南側に移す大規模な改修工事が行われたんです。その川床跡には、水はけのよい砂地が残りました。その土でいろいろな野菜がよく育ったそうなんです。八尾若ごぼうは、福井県の「越前白茎」系の品種のようで、それもここでよく育ち、地元の特産品になりました。

取材スタッフ:八尾若ごぼうは、川床跡の水はけのよい砂地で育っているんですね。そして、この若ごぼうは、葉も、茎も、根も食べられるのが、大きな特徴ですね。

浅井さん:そうなんです。葉はお浸しやふりかけ、茎や根は炒め物や煮物、天ぷらなどにして、あますところなく食べられていますね。でも、正直、子供の頃はおいしいと思わなかった(笑)。大人になって、お酒を飲むようになって、おいしいなと思うようになりました(笑)。

取材スタッフ:八尾若ごぼうは、大人の味ともいえるわけですね(笑)。

あえて一旦枯らすという
ひと手間を加えて。

取材スタッフ:それでは、八尾若ごぼう栽培の1年を教えていただけますか?

浅井さん:種蒔きは9月下旬から10月にかけてですね。11月ぐらいまで普通に育て、あとは放っておいて、一旦枯らすんです。

取材スタッフ:え?!せっかく芽吹いたものを枯らしてしまうんですか?

浅井さん:そうなんです。最初に芽吹いたものは、歯ごたえがありすぎるというか、筋張って硬すぎるんですね。霜に当て、自然に枯れていったものをさらに放っておくと、2月上旬頃に、若い芽が出てくるんです。2回目の芽は柔らかくておいしい。これを3月ぐらいに収穫するというわけです。

取材スタッフ:不思議ですね!

浅井さん:ええ、誰が見つけはったんでしょうね(笑)。でも、霜が強く当たらないとうまいこと枯れへんのです。暖冬だと、人間が刈り取ることもあります。ハウス栽培してはる方も、気候が合わないので、刈り取ります。

取材スタッフ:とても手間がかかっているんですね。

浅井さん:ちょっと抜いてみましょうか? ほら、いいごぼうでしょう?ここが旧大和川の川床跡の土だから、見た目もきれいでまっすぐな八尾若ごぼうになるんですよ。

取材スタッフ:わあ、本当にきれいで、いきいきしていますね!ところで、作物でいっぱいになったコンテナを立てて置いているのは、なぜですか?

浅井さん:収穫した八尾若ごぼうを積み上げていくと、下になった若ごぼうがつぶれるからです。とにかく繊細な作物だから、やさしく、やさしく扱っているんですよ。これを自宅の作業場に持っていき、束ねるんです。

矢のように見栄えよく、
手際よく束ねる。

取材スタッフ:束ねるコツは、どんなことですか?

浅井さん:まず、茶色い薄皮などは、ナイフで丁寧に削いできれいにします。8本ほどをひとまとめにするのですが、中央の2本は太いごぼう、端には細いごぼうを並べていきます。そうすると、矢のように、かっこよくなります。

取材スタッフ:なるほど!矢のように…ですね。何だか勇ましい感じです。

浅井さん:束ねている時、茎を何度も触ると、産毛が取れて、汚くなってしまうので、手早く束ねるように気をつけています。

取材スタッフ:束ねる時まで、細心の注意を払っているのですね。

浅井さん:八尾若ごぼう以外にも、いくつか作物をつくっていますが、若ごぼうが一番手間がかかりますわ。一旦枯らすから5ヶ月は必要。他の作物やったら、2回は収穫できます。でも、この若ごぼうだけは、どんなに大変でもつくらな、あかんのです。河内の人たちが「故郷の春の味」って思ってくれる野菜やから。これからも頑張って、つくっていきます!

ふるさとを大切にして、地元の特産品を守り育てる浅井さん。地域の方とのふれあい、繊細な作物を丁寧に扱う様子に、浅井さんの温かいお人柄を垣間見ることができたような気がしました。

「ごぼう」を使ったレシピ

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