おいしさの故郷 インタビュー #野菜が好きだ

清水森ナンバ®️(青森県弘前市)

真っ赤に色づいた唐辛子。津軽地方ではこの唐辛子のことを「ナンバ」と呼びます。清水森ナンバは400年もの間、弘前市清水森地区で親しまれている唐辛子です。今回は会報誌「自然といっしょに」2019年12月号で取材した清水森ナンバ栽培をあらためてご紹介します!

※「清水森ナンバ」は登録商標です。

京都・伏見から津軽に来た
唐辛子

取材スタッフ:今日はお世話になります!残暑の季節ではありますが、津軽の風は、すでに秋の気配も含んでいるようです。

在来津軽「清水森ナンバ」ブランド確立研究会・会長
中村元彦さん(なかむら・もとひこ)(以下、中村さん):
そうですね。これからどんどん寒くなりますね。でも私はカゴメの「毎日飲む野菜」を毎日飲んでいますので、一年中元気ですよ!

(写真:左が中村さん、右が生産者の佐藤俊治(さとう・しゅんじ)さん)

取材スタッフ:ご愛飲ありがとうございます!ところで、清水森ナンバが栽培されるようになったきっかけを教えていただけますか?

中村さん:約400年前、津軽藩藩主の津軽為信(ためのぶ)公が京都の伏見からこの唐辛子を持ち帰ったのがきっかけです。お城があった清水森地区で栽培が始まったのですよ。

取材スタッフ:とても長い歴史なんですね!

中村さん:しかし、清水森地区にはナンバの乾燥小屋が多く、火事が頻繁に起きました。また、嫁は、朝から晩までナンバの世話。その手でお乳をあげるものだから、赤ん坊は辛くて飲めずに大泣きをする。「清水森には娘を嫁に出すな」とまで言われたんですよ。

取材スタッフ:それは大変でしたね。でもそれほど栽培が盛んだったのですね。

中村さん:昭和40年頃には、海外産に押されて栽培が激減しました。それでも、弘前大学の教授が、おいしさや栄養価に注目して研究を重ね、次第に栽培の基盤が確立されるようになったのです。

取材スタッフ:大学の先生も清水森ナンバに注目されたのですか?

中村さん:そうなんです。研究の結果、栄養成分が豊富で、辛さは標準的な唐辛子より格段に低いということが分かりました。現在、清水森ナンバの種は、トウガラシ博士と呼ばれる弘前大学の前田智雄教授の手でしっかりと管理されているんですよ。

取材スタッフ:大学が研究してくれるのは、心強いですね。

中村さん:そうですね。しかも、2020年には、青森県庁に推奨してもらい申請をした、農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度(地域に根差した農林水産物や食品のブランドを守ることを目的とし産品の名称を知的財産として登録する制度)」にも登録されました。

取材スタッフ:清水森ナンバは、まさに産学官連携の作物なんですね。

栽培するのは、
元・敏腕刑事さん?!

中村さん:それでは、実際の栽培については、こちらの佐藤さんにお話ししてもらいましょうね。

取材スタッフ:今日はよろしくお願いします。佐藤さんは元・刑事さんと伺っているのですが。

佐藤俊治さん(以下、佐藤さん):そうなんです。退職してから畑仕事を始め、15年くらいになります。ナンバ栽培は7年くらいですね。

取材スタッフ:この広い畑をお一人で管理されているのですか?

佐藤さん:はい。現役時代の私は多忙で不在にすることが多かったので、妻がこの畑を守ってくれました。退職後やっと二人でできると思ったら、妻が亡くなりまして。「よし妻の分まで自分が頑張ろう」と決めました。

取材スタッフ:奥様の想いと共に畑仕事をしているのですね。ナンバの栽培はいかがですか?

佐藤さん:最初の年に、水害に遭いまして、50本全部ダメになりました。悔しかったですね。私はじょっぱり(頑固者)ですから「何くそ、来年こそはうまいナンバをつくるぞ!」との気持ちで頑張り、今、やっと2200本ほどになりました。

取材スタッフ:栽培で難しいのは、どんなことですか?

佐藤さん:土づくりですね。石灰窒素で土を消毒して有機肥料をたっぷりすき込めば、害虫も減り、ナンバもよく育ちます。

取材スタッフ:ところで、畑に立っているたくさんの木材は何ですか?

佐藤さん:ナンバを支える柱です。風で茎が揺れるのが、生長にはあまりよくないようです。これは建築の廃材を使っていますよ。

取材スタッフ:ナンバはいつ頃から出荷できるのですか?

佐藤さん:苗を畑に定植するのが6月頃。生長を促すために、1番花と2番花は落として、3番花から実をつけさせます。実の長さが10cm以上になったら収穫。それが7月ぐらいからでしょうか。

取材スタッフ:その時は、まだ青いナンバなんですね。

佐藤さん:そうですね。青ナンバは天ぷらや煮物、炒め物に使われますね。

取材スタッフ:青ナンバが熟して赤くなるのですね。赤ナンバが出始めるのは、いつ頃ですか?

佐藤さん:8月ぐらいからでしょうかね。9月下旬ぐらいまでは、青も赤も畑にありますよ。赤ナンバは料理にも使われますが、大部分は乾燥させて粉になります。収穫は霜が降りる直前、10月下旬くらいで終了します。

辛さの中に甘みと旨み。
伝統料理は「一升漬け」。

取材スタッフ:清水森ナンバのおいしい食べ方を教えてください。

佐藤さん:伝統的なものは「一升漬け」です。刻んだ青ナンバ1升、米麹1升、しょう油1升を樽に2~3ヶ月漬け込んだものです。温かいご飯、冷奴、きゅうり、そば、焼肉など、何でもかけて食べます。この一升漬けは、文化庁が推進する「伝統の100年フード」にも登録されているんですよ。

取材スタッフ:ピリ辛でおいしそうですね!ぜひ食べてみたいです!

佐藤さん:清水森ナンバは、香りもよく、穏やかな辛さの中に甘みや旨みを感じられるのが大きな特徴。私はこれを毎日食べていますから、ご覧の通り元気です(笑)!

取材スタッフ:頼もしいです!それでは最後に抱負をお願いします。

佐藤さん:津軽の農家の方々がけっぱって(頑張って)世話をしてきました。私も岩木山のふもとに広がるこの津軽平野で、これからも頑張ります。

気候風土と人々に守られ、津軽の地にしっかりと息づく清水森ナンバ。そのナンバを丁寧に栽培して、農家として第二の人生を歩んでいる佐藤さん。真面目で熱心なお人柄が作物に表れているようでした。

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