おいしさの故郷 インタビュー #野菜が好きだ

きゅうり(群馬県邑楽館林地区)

和洋中、どんな料理とも相性がよい野菜・きゅうり。利根川と渡良瀬川に挟まれた群馬県邑楽館林(おうらたてばやし)地区では、朝穫れのきゅうりを首都圏の市場に届けてくれます。今回は会報誌「自然といっしょに」2016年7月号で取材した大朏仁(おおつき・ひとし)さんのきゅうり栽培をあらためてご紹介します!

繊細なきゅうりを、
守るのは、かぼちゃ?!

取材スタッフ:今日はお世話になります!たくさんのきゅうりが実っていますね。お店で見るものよりトゲが力強くて、何だか怖いくらいです。

大朏仁さん(以下、大朏さん):そうですね。実だけではなく、葉っぱや茎にもトゲがありますよ。ちょっと触るだけで、すごく痛いので気をつけてください。きゅうりはトマトのように房で実るわけではありません。どこに実をつけるか分からないので、葉をよけたり、茎を避けたりしながら、実を探していきます。だから、私たちは真夏でも長袖で作業します。

取材スタッフ:うわー、大変ですね。収穫や管理は、毎日行われるのですよね?

大朏さん:そうですね。葉も実も、日々、生長していますから、毎日、余分な葉を取り除く作業をします。きゅうりは光が大好きですから、下の方まで、しっかり光が入るように光の道筋を計算して、葉を落としていきます。

取材スタッフ:きめこまやかな世話をされているのですね。

大朏さん:しかも、きゅうりはとても繊細で、病気や害虫に弱い野菜なんですよ。だから、毎日観察してこまめに世話をしてやることが何よりも大切ですね。人間と同じで、病気になってしまったらたくさんの薬で治さなくてはならない。予防していれば薬も最小限で済みますからね。

取材スタッフ:おっしゃる通りですね。ところで、木の根本の色が少し違うのですが、どうしてですか。

大朏さん:病気に強いかぼちゃの茎に接木をしているんですよ。

取材スタッフ:え?土台はかぼちゃなんですか? デリケートなきゅうりを、かぼちゃが守ってくれているというわけですね。

自然の力を
存分に利用して

取材スタッフ:ところで、大朏さんはどのようなサイクルで、きゅうりを栽培されているのですか?

大朏さん:1年に2回植えます。12月に定植して2~6月に収穫する冬春作、8月に定植して9~11月まで収穫する夏秋作です。

取材スタッフ:連作障害(同じ作物を同じ畑でつくり続けることによって起こる障害)を防ぐためにどのような工夫をされているのですか?

大朏さん:収穫が終わったら、土にフスマ(麦かす)を混ぜて畑に水を張ります。発酵の力で土を酸欠状態にするんですね。そうすると有害菌が死滅します。還元消毒という、地球に優しい方法なんですよ。

取材スタッフ:自然の力ってすごいですね。

大朏さん:これだけではありませんよ。土を温めるのも、自然の力を利用しています。

取材スタッフ:え?土を温める?どうしてですか?

大朏さん:根の発育を促すためです。根がしっかりしていないと、元気なきゅうりが実りませんからね。

取材スタッフ:でも、自然の力で土を温められるものなのですか? 太陽の光を当てるとか、そういうことですか?

大朏さん:「発酵熱」を利用するんですよ。土の中に、藁、米糠、大豆、菜種かすを混ぜ込むと、発酵して土の温度を4~5℃上げることができるんですよ。昔からの方法ですね。

取材スタッフ:電気やガスを使わなくても、土の温度が上げられるなんて驚きです。昔の人の知恵はすごいですね。

毎日の食卓に
パリパリの新鮮なきゅうりを

取材スタッフ:大朏さんの親指についている指輪のようなものは、何ですか?

大朏さん:収穫用のカッターです。4本の指で実を押さえて、親指で枝を切ります。実にあまり触らずに収穫できますし、時間も短縮できます。きゅうりは、パリパリっとした鮮度が命です。触れば触るほど鮮度が落ちますから、触るのは最小限。また、1分でも1秒でも早く、食卓に届けたいという思いから、この道具を使っています。

取材スタッフ:専用の道具まであるのですね。わ、切り口から樹液が滴り落ちています!みずみずしさの証ですね!たとえば今日の朝に穫れたきゅうりは、何日後ぐらいにお店に並ぶのですか?

大朏さん:9時45分までに出荷すれば、その日の夕方には、首都圏のスーパーに並びますよ。

取材スタッフ:そんなに早いんですか?!

大朏さん:私はJA邑楽館林・朝穫りきゅうり研究会に所属して「9時45分出荷」に取り組んでいるんですよ。だから、スタッフの方々といっしょに朝5時から収穫を始めます。出荷するのは2,000~5,000本ぐらいでしょうか。

取材スタッフ:生産者の皆様の、そうした努力があるからこそ、私たちはみずみずしくて、パリパリのおいしいきゅうりをいただけるのですね。ありがとうございます。では、最後に抱負をお聞かせください。

大朏さん:きゅうりは本当に繊細で、その時期の陽気とタイミングで、収穫できる量や大きさがずいぶん違ってくるのです。私は40年ほど携わってきていますが、少し分かってきたかな?という程度なんです。まだまだ頑張っていきたいですし、消費者の皆さんに、鮮度のよいきゅうりを、しっかり届けていきたいです。

毎日、早朝から管理や収穫を行う大朏さん。ハウスの中には、「新鮮なきゅうりをたくさんの人に食べてもらいたい」という思いがぎゅっと詰まっているようでした。

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