取材スタッフ:今日はお世話になります!木の緑がいきいきとして、気持ちがよいですね。
須田治男さん(以下、須田さん):この地域はもともとりんご農家が多く、うちもりんごを主に栽培しています。さまざまな品種をリレー栽培していくのですが、ぽっかりあいてしまう時期があるのですね。その時期に試してみたプルーン栽培がうまくいって、次第に広まっていったんですよ。
取材スタッフ:佐久穂町のプルーン栽培には、そのような歴史があったのですね。ところで須田さんは、以前、ソムリエとして活躍されていたそうですね?
須田さん:そうなんです。もともとはフレンチの料理人になりたかったのですが、修行中に出会ったワインに強い衝撃を受けました。世の中には、こういう飲み物を楽しんでいる人種がいるんだなと、憧れみたいな気持ちですかね(笑)。それで、その奥深さをもっと知りたくなり、学校に通って資格を取得し、ソムリエになりました。
取材スタッフ:すごい行動力ですね。でも、その行動力で、実家の農業を継ごうとは思わなかったのですか?
須田さん:継ごうとは思わなかったですね。両親の大変さを、子供の頃から見てきたので、農業へは絶対進むまいと決めていたんですよ。
取材スタッフ:それが、気持ちに変化が起こったのはいつ頃なのですか?
須田さん:社会人として、さまざまな経験を積んでからですね。農業だけが大変なんじゃなかった、どんな仕事も大変なのだと分かりました。そんな時、実家の園地は継ぐ人間がいないので「規模を少しずつ縮小していこう」と、両親が考えているという話を聞いて思ったんです。親たちがこつこつと積み重ねてきた農園。やっと、いろいろな方々から評価をいただくまでになったのに、もったいないと。今だったら、両親からしっかり技術を引き継げて、しかも、新しいことにも挑戦できるのではないか、とね。結婚2年目のことでしたので、妻も若干驚いていましたが、理解してくれました。
取材スタッフ:大きな決断をしたのですね。でも、大人になってからの農業の経験は、ほぼ、なかったのですよね?
須田さん:そうなんです。栽培技術、出荷、経理、営業…全く何の経験もない素人でした。
取材スタッフ:まさにゼロからのスタートだったのですね。そうした中、師匠であるお父様によく言われたことはどんなことでしたか?
須田さん:「毎日園地に足を運べ」ということでしたね。りんごとプルーン、あちらこちらに点在しているので、見て回るのも大変なのですが、毎日足を運ぶことで見えてくることがたくさんありました。だから、それは毎日欠かさずやり続けています。