おいしさの故郷 インタビュー #野菜が好きだ

ちんげん菜(茨城県行方市)

一年を通じてお店に並ぶちんげん菜。関東ローム層の豊かな土壌に恵まれた行方市(なめがたし)は、ハウス施設も整っていることから、ちんげん菜の有数の産地として知られています。今回は会報誌「自然といっしょに」2018年2月号で取材した有馬逸雄(ありま・えつお)さんのちんげん菜栽培をあらためてご紹介します!

パンダといっしょに
やってきた野菜?!

取材スタッフ:こんにちは!今日はよろしくお願いいたします!ちんげん菜がいきいきと育っています。もともとは、中国の野菜でしたよね。

有馬逸雄さん(以下、有馬さん):そうですね。中国産のアブラナ科野菜ですね。日中友好のシンボルであるパンダといっしょに、1970年代に日本に入ってきた野菜なんですよ。

取材スタッフ:パンダといっしょにですか?!何だかすごいですね。今では、日本の食卓にもよく出てくるポピュラーな野菜となりました。一年中お店で見られるような印象がありますが、ちんげん菜の旬は冬…でしょうか?

有馬さん:はい、本来の旬は冬ですが、今では技術も発達しましたので、一年中栽培することができます。定植から収穫までは、季節にもよりますが、25~50日ぐらいとなります。

取材スタッフ:サイクルが短くて、忙しそうですね。では一年中、途切れることなく、栽培を行っていらっしゃるのですか?

有馬さん:ずっと、栽培を続けていますと、土が悪くなるので、一年に一度、5月に、しっかり土を消毒します。ハウスごとに時期をずらしながら行います。

取材スタッフ:どのような方法で消毒するのですか?

有馬さん:農薬を使わない「太陽熱消毒」という方法です。土にたっぷり水を含ませ畝をビニールで覆います。そしてハウスを全部締め切って約1ヶ月そのままにしておきます。ハウス内の温度は太陽熱で40~50℃になり、その熱で土の中の悪い菌や害虫の卵を消毒することができるんです。

取材スタッフ:自然の力を存分に利用した消毒方法なんですね。

春には春の、夏には夏の、
季節に応じた管理。

取材スタッフ:ハウスがいくつもありますが、中の様子はそれぞれ違うようですね。

有馬さん:そうですね。ハウスごとに時期をずらして、途切れなく出荷できるようにしています。奥の方には、種を発芽させる育苗ハウスもあります。

取材スタッフ:種蒔きしてから、どれくらいに育ったら定植するのですか?

有馬さん:葉が2枚から2枚半ぐらいになったら定植します。ちんげん菜って、根に近い部分が、ツボのように、ふっくらと膨らんでいるでしょう?あの形が偏らないように、垂直に定植します。

取材スタッフ:出荷時の形にもこだわって定植していらっしゃるのですね。ところで、一年中、高い品質を保つには、季節ごとのお世話もいろいろ違ってくるのではないですか?

有馬さん:そうですね、たとえば春は「光を観察すること」が大事なんですよ。

取材スタッフ:光…ですか?

有馬さん:春は、空気が十分に温まっていなので、日が陰ればすぐに温度が下がってしまいます。その急激な温度差は、作物にはよくないんです。だから光をよく観察して、それに対応した温度管理をしていきます。

取材スタッフ:なるほど。では夏はどのようなことに気を付けますか?

有馬さん:夏は、害虫の活動が活発になりますから、害虫に気を配ります。防虫ネットや捕虫テープなどを活用して、使用する薬が最小限で済むようにしています。

取材スタッフ:暑い中のハウス作業は大変ですね。では秋はどのような世話を?

有馬さん:長雨や台風の時期となりますね。作物内の水分が多すぎると葉が変色してしまうので、水はけに注意するようにしています。

そして冬ですが、保温と換気が重要になりますね。行方は、冬の夜ならマイナス10℃ぐらいになり、作物が凍ってしまうんです。そうすると、根元の膨らみが割れて商品にならなくなります。そうならないように、ハウスのビニールを二重にして暖房をし、タイミングを見計って換気をしますね。

取材スタッフ:私たちが普段、ちんげん菜を一年中おいしく食べられるのも、農家の方の、四季の変化に対応したお世話があってこそなんですね。

畑と食卓の間に、
自分たちがいると肝に銘じて。

取材スタッフ:ところで、有馬さんはどのようにしてちんげん菜を召し上がっているのですか?

有馬さん:ちんげん菜は大好きで、味噌汁の具にしてよく食べます。浅漬けにするのもおいしいですよ。

取材スタッフ:ご飯が何杯でも食べられそうですね(笑)。

有馬さん:ちんげん菜は一口大に切って、よく洗った後、しっかり水けをきって冷凍用ジッパー袋に入れれば、生のままでも冷凍して使えますよ。凍らせたちんげん菜をスムージーにしてもおいしいです。半解凍にして刻んだものにドレッシングをかければ、冷たいサラダとしても楽しんでもらえます。

取材スタッフ:ちんげん菜というと、中華料理や炒め物…というイメージが強かったのですが、有馬さんのお話を伺って、とても幅広く楽しめる野菜だということを実感しました。

有馬さん:お役に立てたらうれしいです。皆さんの「おいしい」の笑顔が、私たちの何よりの活力ですよ。

取材スタッフ:こちらこそ、おいしい野菜を毎日届けていただいて、本当にありがとうございます。

有馬さん:消費者の皆さんの口に入るものを扱っていますから、私たち農家の責任はとても大きいと思っています。私たちは、畑と食卓の間にいることを常に忘れないようにして、これからも頑張っていきます。

消費者のことを常に考えながら、栽培管理を行っている有馬さん。気温や湿度、日差しや風の流れなど、四季の変化を肌で感じ取り、適切な世話を施す姿勢に、プロフェッショナルのこだわりを感じました。

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