おいしさの故郷 インタビュー #野菜が好きだ

ズッキーニ(宮崎県新富町)

フランス料理やイタリア料理でよく目にするズッキーニ。形はきゅうりに似ていますが、かぼちゃの仲間です。日本に入ってきたのは昭和50年頃。ようやく日本の家庭料理にも利用されるようになってきました。今回は会報誌「自然といっしょに」2014年4月号で取材した長友光義(ながとも・みつよし)さんのズッキーニ栽培をあらためてご紹介します!

陽光豊かな地域が育む、
太陽の野菜。

取材スタッフ:今日はお世話になります!ズッキーニが畑で実っている様子を初めて見ました!葉がすごく大きいのですね。「太陽の光をしっかり受け止めるぞ!」と主張しているようです。

長友光義さん(以下、長友さん):そうですね。宮崎県の中でもここ新富町は、日向灘に面した宮崎平野の一角にあります。とにかく、まばゆいばかりの陽光が特徴の地域といっても過言ではないと思っています。そうした中で育つズッキーニは「太陽の野菜」と呼んでもいいくらい、太陽との相性がいい野菜なんですよ。

取材スタッフ:そもそも、宮崎県に、西洋野菜であるズッキーニが導入されたのは、どのような経緯があったのですか?

長友さん:宮崎県は地域の特性に合った新しい野菜を、既存の特産野菜に執着することなく常に模索していました。それで、たまたま、この地域で2軒の生産者が栽培を試してみたのだそうです。地道に努力を重ねて、今に至っていますよ。

取材スタッフ:そんな経緯があったのですね。太陽の野菜とまでいわれるズッキーニを、どのようにお世話しているのですか?

長友さん:まずはとにかく、枝の付け根まで陽光が届くように、葉を広げてやるのが私たちの仕事ですね。

取材スタッフ:畝と並行に張られている2本の細い紐は、葉を広げるのに関係がありますか?

長友さん:その通りです。葉が実に覆いかぶらないように、支える役目があります。畝を見回りながら、葉を持ち上げてこの紐にひっかけてやるんですね。

取材スタッフ:これだけ広い畑ですと、そうした世話も大変ですね。

長友さん:ここには長さ100mの畝が約10本ありますから、しっかり見ていくと、10分や20分で終了というわけにはいきませんね(笑)。

取材スタッフ:何時間も費やすのでしょうね。では、ズッキーニ栽培の1年を教えていただけますか?

長友さん:私たちは5月と9月と12月に植え替えをします。

取材スタッフ:3回の植え替えで通年栽培が実現しているのですね。

長友さん:植えて最初にできる実は色も浅いしボテっとした形です。収穫の回数が進むごとにツヤも出てくるし、形もしゅっと引き締まってきますよ。

花が開く午前中を狙って
行われる受粉作業

取材スタッフ:ズッキーニの質や収穫量を維持するにはどんなことが必要ですか?

長友さん:すべての作業が質や収穫量に関わってきますが、中でも「受粉」が大きいでしょうね。受粉がうまくいかないと結実しなかったり、先端の細い実ができたりします。朝露でめしべが濡れていると受粉がうまくいかなかったりすることもあるので大変です。

取材スタッフ:受粉は自然には行われないのですか?

長友さん:私たちの場合は手作業ですね。ズッキーニの花は午前中しか咲かないので、その時が絶妙なタイミングなんです。だから受粉作業は午前中の重要な仕事のひとつなんですよ。

取材スタッフ:花が開くのは午前中だけですか?!時間が限られているのですね。

長友さん:今の時期は植え替えてから間も無いですから、まだ雄花の力が弱くて花粉が十分に出ません。そこで、少し栽培が進んでいる農家の方から、朝に雄花をもらってきて受粉しています。もちろんもらった雄花の分は、お手伝いをしてお返しします(笑)。

取材スタッフ:そうした絆がしっかり育まれているのですね。

長友さん:加えて、収穫も午前中の大事な作業なんです。午後には箱詰めが待っていますから。

取材スタッフ:午前中には、作業がぎゅっと詰まっているのですね!

オリーブオイルでソテーし、
軽く塩こしょう、これで十分。

取材スタッフ:収穫はどのような手順で行うのですか?

長友さん:爪で皮に傷をつけないように薄いゴム手袋をします。収穫の後、カッターで切り口をきれいにします。

取材スタッフ:とても繊細な作業なのですね。ところで、ズッキーニ栽培で一番大切なことは何ですか?

長友さん:ズッキーニは自分でどんどん伸びていくので育てやすいです。だから、私たちは特別なことは何もしていません。できることは、のびのび育つ邪魔だけはしないこと...これに尽きるのではないでしょうか。

取材スタッフ:よく分かりました。長友さんは、どのようにしてズッキーニを召し上がっていますか?

長友さん:オリーブオイルでソテーして、塩とこしょうで味付け。これだけで十分おいしさが楽しめます。あとは薄くスライスか短冊形に切って味噌汁というのも好きですね。天ぷら、炒め物…ズッキーニは、味が濃くないので、何でも合いますね。

取材スタッフ:何だかお腹が空いてきました(笑)。ズッキーニがもっともっと広がるといいですね。

長友さん:そうですね。これだけいい野菜ですから、広げていければと思います。ここ新富町には、農協さんも、地域の生産者の方々も、とても熱い想いを持っている人たちが多いと思います。私も生産者の一員として、その想いに応えていきたいと思っているんですよ。

宮崎の陽光をたっぷりと浴びて育つズッキーニ。生産者の長友さんも、とても温厚で笑顔が似合う太陽のような方でした。「のびのび育つ邪魔をしないこと」。子育てのように愛情を込めて育てる生産者の方の姿が、そこにありました。

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