おいしさの故郷 インタビュー #野菜が好きだ

赤ピーマン(高知県安田町)

高知市の東、約50キロ。太陽に照らされてキラキラと輝く土佐湾を右手に見ながら車を走らせると70分ほどで安田町に入ります。今回は会報誌「自然といっしょに」2019年1月号で取材した安田町・公文洋輔(くもん・ようすけ)さんの赤ピーマン栽培をあらためてご紹介します!

オランダで受けた強い衝撃。
将来の高知の農業を担う
子供たちのためにも。

取材スタッフ:とても近代的で明るい栽培ハウスですね?

公文洋輔さん(以下、公文さん)オランダで視察した施設を参考にしてつくったんですよ。

取材スタッフ:オランダ…ですか?

公文さん:私は長年、JAで営農指導員をしていましたが、退職する1年ほど前に、姉妹都市であるオランダのウェストラント市に農業視察に行きました。ウェストラント市はオランダの中でも、ハウスによる施設園芸が盛んな地域です。そこで効率的な農業を間近に見て、衝撃を受けたんです。ものすごいショックでした。

取材スタッフ:どんなところに、ですか?

公文さん:オランダでは、天井の高い大規模ガラスハウスで、温度、湿度、CO2、養水分、風向きに至るまで、最高収量を目指した管理技術が徹底されていたんです。安田町の赤ピーマン栽培にもこうした技術を取り入れることによって、高品質、高収量が期待できると思いました。それから、子供たちにとっても、今まで以上に農業に魅力を感じてくれるものになるのではないかと思ったんです。

取材スタッフ:でも、資金とか、準備とか、いろいろ大変だったのではないですか?

公文さん:そうですね、かなり勇気が要りました(笑)。でも「やってみたい」という気持ちのほうが強くて、もう、えい!という感じです(笑)。安田町の方、土地を貸してくださった地元の方をはじめ、皆さんの協力がなければ始められなかったと思います。

水耕栽培の難しさ。
水耕栽培ならではのやり甲斐。

取材スタッフ:こちらのハウスには、どれくらいの赤ピーマンの木が植えられているのですか?

公文さん:約5,000本のハウスが2棟ありますから、合計約10,000本です。10月から翌年の7月まで収穫できます。すべてを水耕栽培で育てていて、だいたい2ヶ月おきに収穫のピークがきますね。

取材スタッフ:赤ピーマンの栽培で気を遣うことはどんなことですか?

公文さん:緑ピーマンは、花が咲いてから1ヶ月ほどで収穫ができるんです。そもそも、赤ピーマンとは、緑ピーマンが赤く熟したものということは、ご存じですよね?だから赤ピーマンは、緑より長く、開花から2ヶ月ほど木の上で熟させないといけないので、どうしても木が早く疲れてしまうのです。すると抵抗力が弱って病気になってしまう。そうならないように、実を間引いたりして、元気を保ってやることが必要ですね。

取材スタッフ:あれ?では、緑ピーマンも出荷ができてしまうのですか?

公文さん:赤色がきれいに出て、甘みが強い、赤ピーマン専用の苗を使っているので、緑ピーマンでは出荷していませんよ。

取材スタッフ:そうですよね、失礼しました(笑)。毎日ハウスの中を見回って、真っ赤になったものから収穫されるんですね?

公文さん:はい、そうです。赤ピーマンはどうしても低い位置から熟していくので、その時期の収穫は、太ももがパンパンになります(笑)。

取材スタッフ:そんなご苦労もあるのですね。これまでに、失敗したことはありましたか?

公文さん:いくつもありますよ(笑)。夏は、土台となる培地が40℃にもなって根が弱るのですが、私はそのことを気にしすぎて、水を多めに与えてしまったんです。そうしたら、木は生長するけど実がとまらん(実らない)…という年がありましたね。

取材スタッフ:難しいんですね。

公文さん:私は親父のもとで土耕栽培を今も続けているのですが、水耕栽培のほうが難しいと感じます。

取材スタッフ:どんなところがですか?

公文さん:土耕栽培の方やったら、水や肥料を与えた時、土がクッションになってくれる。余力というか、余白というか、うまく言えないけれど、そんなところがあると思うんです。逆に水耕栽培は、水や肥料の影響が直接的に表れる。そこら辺が難しいですね。

取材スタッフ:なるほど。

公文さん:でも逆を言えば、水耕栽培のほうが、軌道修正がやりやすいということになります。それがおもしろさでもあったりします。

取材スタッフ:水耕栽培のよさを最大限に活用できる方法を、日々考えていらっしゃるのですね。

一生懸命、汗を流す。
手をかけんことには終わらん。

取材スタッフ:ところで、公文さんが好きな赤ピーマン料理は何ですか?

公文さん:軽く焼いてそのままでもいいし、焼肉のたれなどをかけてもいいですね。ポン酢もいいかもしれませんね。甘みがあるので、軽い味付けでおいしいと思います。あとチンジャオロースもいいと思いますよ。

取材スタッフ:赤ピーマンでチンジャオロースですか?! 贅沢ですね、でもおいしそうなのでいつかつくってみたいです(笑)。では、最後に公文さんの赤ピーマン栽培についての想いをおしえてください。

公文さん:私の親父は赤ピーマンの仕事ばかりで、どこへも連れて行ってもらった記憶がありません。でも、自分が大人になった時に思いました。親父がそこまで大切にしてきた赤ピーマンを、自分もつくりたいと。親父から学んだことは、「一生懸命、汗を流す。手をかけんことには終わらん」ということです。少しでも親父に近づけるように、と思っているのですが、自分はまだまだです(笑)。

取材スタッフ:冒頭で「子供たちのためにも」とおっしゃっていましたが。

公文さん:そうですね。地元に、子供たちが興味や誇りを持って取り組める農業の場をつくれたらいいなと思います。課題もありますけれど、それ以上にやり甲斐も感じているので、これからも頑張っていきたいです。

安田町の農業のため、子供たちの未来のため。強い気持ちを持って新しい農法に挑戦した公文さん。日々頑張っている様子は、きっと子供たちにも、素敵に映っていることでしょう!

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