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Vol.2 飾り包丁で、おいしく美しく

ごはんをいつもよりおいしく、
いつもより見た目もきれいに仕上げる秘密は、
ちょっとした下ごしらえ。

野菜で言うと、アク抜きをしたり、
下茹でをしたり、たくさんの手法があります。
今回は、包丁を使った下ごしらえ“飾り包丁”をご紹介します。

包丁を使った下ごしらえの目的はさまざまですが、
大きく分けると、味をおいしくするため、
そして見た目をきれいに仕上げるために施します。

今回は、和食の料理研究家、𠮷田麻子さんに
飾り包丁の代表例を教えていただきました。
同じ目的でも、使う食材によって包丁の入れ方は異なります。
煮物に焼き物に、いろんな調理法に使える飾り包丁、
ぜひお試しください。

『おいしさ』をプラスする 飾り包丁

煮物をする際は、味がしっかりしみ込むように。肉類など厚みのあるものを焼く場合は、まんべんなく均一に火が通るように。
少しの包丁使いが、おいしさを増して、調理の失敗を減らしてくれます。

十字に切り込みを入れる

おでんやお鍋、煮物と、この時季大活躍の大根。片面に縦横一直線の切り込みを入れます。切る深さは素材の厚みの1/3程度を目安にしましょう。

青菜を束で茹でる場合も、根元に十字の切り込みを入れると短時間で茹であがります。
鹿の子に切り込みを入れる

なすは、皮が固く中がやわらかいため、全体に味がなじむよう、皮の部分にだけ鹿の子(格子状)に切り込みを入れます。大きさによりますが、切る深さは1cm度に。

鹿の子切りは、こんにゃくやイカなどにも応用できます。味をしみ込ませるだけでなく、噛み切りにくい素材も食べやすくなります。
観音開きにする

部分によって厚さの異なる鶏肉は、厚みのある部分に対して斜めに包丁を入れます。切り落とす少し手前で止め、肉を手で開きましょう。火の通りが均一になり、おいしさや食感にムラがなくなります。

肉類全般だけでなく、魚の切り身などにも有効です。包丁は手前に引くように切ると、断面がきれいになります。

『美しさ』をプラスする 飾り包丁

料理は目でもいただくもの。素材にひと工夫の切り込みで、見た目が美しくなり、それが「おいしそう!」につながります。

皮を削ぐ

かぼちゃのような内と外の色のコントラストが美しい食材は、縦線を描くように削ぎましょう。華やかな黄色が際立つだけでなく、火の通りも良くなります。

ほかにも、内外で色目の違う食材、なすやきゅうりなども華やかになります。
魚の皮に切れ目を入れる

煮物や焼き物をする際、魚の皮目に切り込みを入れておくと、皮が破れにくく、煮くずれを防ぎます。十文字や二本線などお好みで。

サバやカレイ、サワラなど、どんな魚にも使えます。切り身の場合は片側に、1匹丸ごとの場合は両面に入れましょう。
エビの筋を切る

熱を加えるとくるんと曲がってしまうエビ。まっすぐを保つためには、腹部に数か所切り込みを入れ、さらに背中側から指で押さえて筋を切ることがたいせつです。

腹部への切り込みだけでは、曲がってしまいます。「ぶつぶつ」と音が鳴るくらい、しっかり筋を切りましょう。

飾り包丁の疑問、解決します

Q
切り込みは見せるべきなの?
A
大根に入れる切り込みは“隠し包丁”とも言われ、和食の世界では見えないようにして皿に盛ります。なすやこんにゃくに入れる鹿の子は、見た目にも美しいので、見えていて構いません。

Q
切り込みは両面に入れるべき?
A
食材によって異なりますが、野菜は片面で大丈夫です。
同じく魚の切り身も片面ですが、1匹使う場合は両面に入れると、よりおいしく美しく仕上がります。
Q
切り込みを入れる向きは関係あるの?
A
エビやイカなど、火を入れた際に縮まるのを防ぐ場合は、繊維を断ち切るように切りましょう。味をしみ込ませる、煮くずれを防ぐ目的の場合は、向きは気にしなくていいでしょう。

“飾り包丁”は、その名の通り、
食材をおいしく、美しく、食卓に飾るための
隠されたひとてまです。

素材の持ち味を生かし、美しく盛り付けるのは
日本伝統の“和食”ならではの心遣い。
食べる人を思う、
料理人のおもてなしの心から生まれています。

知ってさえいれば簡単。
それほど時間も手間もかかりません。
素材と向き合う時間が増えれば、
それだけ愛情も育まれます。

ちょっとしたひとてまで、
いつもの料理をおいしく、美しく、
仕上げてみませんか?

監修/料理研究家 𠮷田麻子
日本料理を中心に、少人数制で学ぶ料理教室を大阪・東京で開催。著書に「日本料理 𠮷田麻子料理教室」(京阪神エルマガジン社)があるほか、雑誌の連載多数。

ご紹介した「ひとてま」はいかがでしたか?
試してみたい!

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