後編は「食品安全部」と「工場」についてお届けします。
私たちの食卓に届くまでに、原料は工場で加工され、厳しいチェックを経て商品となります。日々多くの従業員が目に見えない努力を重ねています。今回は、そんな現場の取り組みをご紹介します。
まだ起きていない危機への対応のための仕組みづくり
カゴメの安心・安全を支える「食品安全部」。その活動は原料やお客様からのご指摘品の化学的な分析や、まだ起きていないリスクを予見する活動などさまざまです。前編に引き続き、食品安全部で働くメンバーにインタビューし、普段なかなか知ることのできない品質管理の取り組みをご紹介します。
「カゴメでは『リスク予見プログラム』を作り、2023年から実際に食品安全部で予見活動を行っています。世界中で起きている変化点(=基準値の変更や気候変動、注目度の高いニュースなど)を複数のメンバーで担当を決めて調査し、リスクを未然に防止するための積極的なアクションをとっています。」
起こる前に防ぐ、品質を守る「リスク予見活動」
「農薬やその他の情報については、毎日情報収集を行っています。2週間毎に1度は食品安全部のメンバーが集まって調べた情報を持ち寄り、その影響度を検討します。政府や海外の情報、違反や回収の事例、食品データベースなども参考にしますし、同業他社の動向を共有することもあります。」
「農薬の基準値改正は突然決まるのではなく、数年前から議論が始まることが多いです。消費者庁の食品衛生基準審議会の情報などを見ることで『この農薬は基準値が厳しくなりそうだ』と予測することも可能です。そうした変化点の情報をいち早くつかみ、事前に対応を考えておくことも食品安全部の大切な役割です。
前提として農薬は安全性が確認されたものを必要最低限で使用しています。もちろん『農薬をできるだけ使わない』工夫も現場では続けています。農薬は時代とともに使用基準や安全性の見直しが行われるため、その変化に合わせて柔軟に対応することが、最終的にはお客様の安全につながると考えています。」
「信頼を失うのは一瞬」異常発生時の対応
異常が起きたときに、いち早く原因を探る
「商品に『いつもと違うこと』が起きたとき が私たちの出番です。
あってはならないですが、お客様からのご指摘で『いつもと味やにおいが異なる』ことや『商品に異物がはいっている』ことなどは、いち早い対応が必要となります。
なぜ商品がこのような状態になっているの か。原因を一刻も早く突き止めることこそ、 私たちの大きな役割です。」
「におい」を見逃さない
「食品の異常はほんの小さな違和感から始まります。その違和感をいち早く見つけ出すために『におい』はとても重要な情報です。出荷前の製品の検査で異常を感じた場合、お客様の手に渡る前に詳しく分析して、出荷を止める必要があります。そこで活躍するのが『官能検査』と呼ばれる方法。特別に訓練を受けた社員が『におい』をかぎ分け、わずかな違和感も見逃しません。
においの感じ方は人によって少しずつ違います。しかし、『薬品のようなにおい』『プールの塩素のようなにおい』『病院で感じる独特なにおい』など、原因物質が持つ典型的なにおいはある程度分類できます。訓練を重ねることで、正確に嗅ぎ分けられるようになります。
最新の分析機器でも測定が難しいごく微量のにおいを、人間の鼻は敏感にキャッチすることができます。だからこそ、人の嗅覚と機械の分析を組み合わせ、二重のチェックを行っています。」
「においを嗅ぎ分ける」社内資格
「異臭検査の資格取得は定期的に行われます。試験の成果レベルに応じてその人がどの範囲まで検査できるかが決まります。」
お客さまからのご指摘品は
工場と「食品安全部」の連携で分析
「お客様から商品について『カゴメお客様相談センター』などを通じてお問い合わせをいただいたとき、返品されたご指摘品を調査するのは生産した工場です。このステップでは、生産工程に問題がなかったか、設備や手順に不備がなかったかをいち早く確認します。その上で、内容によっては食品安全部へとつなぎ、より専門的な視点での調査を進めていきます。
生産した工場自らが調査を行うことで、スピーディーに原因を突き止められるのが大きな強みです。必要に応じて商品の回収や、商品や生産工程の改善といった対応を即座に取ることができるのは、現場の手と目があるからこそ。こうした連携が、お客様の安心と信頼を守る礎になっています。」
安心・安全な品質は従業員の行動から
工場では従業員一人ひとりの体調チェックを欠かしません。体調がすぐれないときには無理をせず、常にベストな状態で現場に立てるよう心がけています。
もちろん、基本的な衛生対策も徹底しています。手洗いやエアシャワーは当たり前のことですが、その「当たり前」を丁寧に続けることこそが、品質管理につながります。内容物に直接触れるような特に清潔さが求められる作業エリアでは、専用の衛生服を身に着け、異物の混入を起こさないよう細心の注意を払っています。
カゴメでは2005年に、生産現場での「行動指針」を定めました。これは単なるルールではなく、「品質第一」という姿勢を明文化したものです。「行動指針」の最後には、「私は、今日の仕事を振り返り、誇りをもって家族に話すことができます」という一文があります。一人ひとりが「行動方針」を生産ラインに入る前に目にすることで、毎日品質に対する思いを新たにして生産活動に向き合っています。
工場行動指針
お問い合わせの多い事例から
購入時期による味の違いについて
「同じ商品をケースでまとめて購入される方も多いと思います。ところが、半年ほど経って再びご購入いただいた際に、『あれ?前と少し味が違うな』と感じられることがあります。これは、カゴメの商品の原料は農産物のため、収穫された時期や地域によってどうしてもわずかな違いが出ることがあるからです。 」
異物混入への対応
「『異物が入っているのでは?』というお問い合わせも少なくありません。
ごくまれにですが、異物の調査を進めてみると、実際には歯の詰め物や薬のカプセルと成分が似ていた、というケースもあります。これは、お客様が飲料などを飲まれるときに、気づかないうちに口の中のものが外れて混ざってしまう場合もあると考えられます。
このように、どのような異物なのかをしっかりと調べて必要があれば対策をとります。」
微生物に関して
「紙パックの商品では、段ボールに入った状態でビニールの包装を開封するときにカッターでうっかり傷をつけてしまうことがあります。ほんの小さな傷ですが、そこから菌が入り込み、気づかないうちに増えてしまうことがあるのです。
また、ペットボトルでは、飲みかけを常温で置いておくと、口をつけたときに菌が入り込み、繁殖してしまうこともあります。こうした場合は『どんな菌なのか』『食中毒を起こす可能性があるのか』をきちんと調べ、お客様に報告することで、安心していただけるよう対応しています。」
私たちの想い
「私たちは、お客様のご指摘に対して真摯に向き合い、多面的に評価した上で迅速かつ正確に回答することを心がけています。
その結果、大事に至らなかったとの結論に至ることが多いのですが、『お客様の安全を守る』という信念を持ち、お客様の期待に全力で応えていきます。」
安心・安全な商品を
お届けするために
いかがでしたか。
カゴメの安心・安全は、これまでご紹介してきたような独自のしくみによって支えられています。
「畑は第一の工場」という考えのもと、「畑」「工場」「研究開発」の三つの分野が連携し、それぞれの現場で最善を尽くしています。その中でも食品安全部は、化学的な視点から品質を守るだけでなく、将来起こり得るリスクを先回りして予測して回避したり、さらにそのための分析技術の高度化にも努めています。
これからもカゴメは、お客様に安心で安全な商品をお届けできるよう、たゆまぬ努力を重ねてまいります。