[第三話:製造編]
2025.09.02
トマトジュースのカゴメの中でも、『夏しぼり』
は別格!とびきり贅沢なトマトジュースです。
誕生から今年で29年目を迎えるカゴメ『夏しぼり』。誕生以来、今なお愛され続けるその魅力の秘密を解明すべく、前号(第二話[味づくり編])では、現在の開発担当者である山﨑健雄さん(商品開発本部[飲料開発2グループ])にお話を伺いました。
『夏しぼり』の味づくりを担当して今年で2年目となる山﨑さん。現在入社8年目とのことですが、カゴメのトマトジュースの製造拠点ともいえる那須工場で、原料の「トマト」に向き合うこと2年半、さらに「ジュース」としての品質に向き合うこと3年。製造現場の最前線で、トマトジュースに5年半向き合ってきたキャリアの持ち主。トマトジュースの商品開発担当者となった山﨑さん、『夏しぼり』についてこう言い切ります。
「カゴメの中でも、『夏しぼり』は別格!これほど贅沢なトマトジュースは他にありません」。
那須工場の現場で5年半トマトジュースづくりに向き合ってきた山﨑さん。
現在は商品開発本部で、開発担当者として『夏しぼり』の開発に携わる。
何が別格?『夏しぼり』4つの別格ポイント。
「『夏しぼり』は別格」と語る山﨑さん。では何がそんなに別格なのか、山﨑さんは4つのポイントを挙げて語ってくれました。
- 〈原料〉が別格
- 〈栽培〉へのこだわりが別格
- 〈製造法 ~ 搾り方〉が別格
- 〈味覚〉審査が別格
「では一つ一つ、具体的に説明していきましょう。まず第一のポイントは『夏しぼり』に使われるトマト原料についてです。前号でも少し触れましたが、『夏しぼり』にはカゴメが保有する約7,500種ものトマト種子の中から、交配によって生み出された『凜々子®(りりこ)』という加工用トマトが使われています。加工用トマトとは、ジュースに搾られて美味しさを発揮する原料用トマトのこと。実は生で食べるトマトをそのまま搾っても、単純に美味しいトマトジュースができるとは限りません。“食べて美味しいトマト”と、ジュースに搾って“飲んで美味しいトマト”は異なるものなんです」。
美味しいトマトジュースづくりのために開発された
カゴメ独自の加工用トマト品種『凜々子®』
リコピン量にもこだわった『凜々子®』は、中心部まで真っ赤なことが特徴。
飲んで美味しく、リコピン量にもこだわった
『凜々子®』を使用。
「『夏しぼり』には『凜々子®』が100%使用されています。しかも、その年の夏に収穫したばかりの“旬”の美味しさが詰まった完熟トマトだけを搾ります」。
と語る山﨑さん。しかし、もう一つ知っておいていただきたい、カゴメならではのこだわりがあると言います。
「『凜々子®』には味わいだけでなく、生食用のトマトに比べてリコピン量が多いという特徴もあるのです。その量には個体差こそあれ生食用の約2倍以上。しかも『凜々子®』の中でも特に〈高リコピントマト〉と呼ばれる、リコピン量の多いトマトも原料に加えています。その配合量はその年々、日々の収穫量によって異なりますが、全体の10~40%くらいでしょうか。その意味で『夏しぼり』は、健康を気遣うお客様にもぜひ召し上がっていただきたいトマトジュースなんです」。
畑の中でトマト栽培に向き合う契約農家さんとフィールドパーソン。
[契約農家さん]と[フィールドパーソン]の二人三脚による、トマト栽培へのこだわり。
「創業以来カゴメでは、安心・安全な原料を調達するためにトマトの[契約栽培]に取り組んでいます。契約栽培は、まず作付け前に農家の方々と全量を買い入れる契約を結びます。この契約により、農家さんは高品質の原料を作ることに専念できます」。
さらに山﨑さんは、契約農家さんに寄り添う[フィールドパーソン]の存在について、その重要性を語ります。
「加工用のトマトは基本的に露地栽培です。ハウス栽培と異なり自然が相手なので、天候によって何が起こるか予想もつきません。そんな時に契約農家さんに寄り添い、適格に栽培のアドバイスを行うのが、カゴメのフィールドパーソンです。現在カゴメにも9名しか存在しない“農業のスペシャリスト”。
フィールドパーソンは契約農家さんの畑を一軒一軒巡り、生育状況を一緒に確認しながら栽培指導をしたり、農家さんからの質問に対して随時アドバイスを行うのが主な仕事です」。
カゴメの加工用トマト栽培に専念する契約農家さんと、農家さんをしっかりサポートするフィールドパーソン。その二人三脚によって丹念に育てられる『凜々子®』。原料のみならず、その栽培へのこだわり方も、カゴメならではと言えそうです。
1996年に開発されたカゴメ独自の[ゆるしぼり]製法のメカニズム。
『夏しぼり』は製造方法こそが別格!
“ゆる~く搾って”美味しいとこだけ。
カゴメ那須工場で5年半に亘ってトマトジュースづくりに携わってきた山﨑さん。『夏しぼり』がこれほど長く愛され続けてきた要因、その最大のポイントは特別な製造方法“搾り方”にあると言います。
「“旬”の美味しさを閉じ込める『夏しぼり』の味わいは、できるだけトマトの果肉を押しつぶさず、丁寧に搾るカゴメ独自の[ゆるしぼり]製法によるものです。ゆるしぼり製法とは、すべてを搾り切らないことで雑味が出ず、“旬”の素材の持ち味を引き出せる特別な製法のこと。カゴメはこの製法を、『夏しぼり』が誕生した1996年から29年間変わることなく採用しています」。
山﨑さんはこう断言します。
「[ゆるしぼり]は『夏しぼり』のために開発された製法のようなもの。『夏しぼり』は唯一無二、カゴメのすべてのトマトジュースの中でも、一番贅沢とも言える搾り方でつくられているのです」。
[ゆるしぼり]製法で残ったトマトはトマトペーストに。
農家さんが一年間大切に育ててくださった
トマトは、しっかり使い切ります。
[ゆるしぼり]製法によって、美味しいところだけを搾って詰める『夏しぼり』。では搾った残りの分はどうするのか?聞いてみました。
「一年間、農家さんが手間暇かけて、一玉一玉手塩にかけて育ててくださった大切なトマトです。決して無駄には出来ません。残りの分はトマトのペーストにします。
もとより加工用トマト『凜々子®』は、生食用トマトのように中心部にゼリー状の緑っぽい部分がほとんどなく、赤い果肉の部分がギュッと凝縮したようなトマトです。ですからそのまま食べても、ねっとり濃厚な味わい。ペーストにするとその味がさら深まります」。
“加工用”と聞けば、つい工業的なイメージを持たれがちですが、カゴメの『凜々子®』は搾ったときの“味も良し”、さらに“リコピン量も多し”と、ジュースにして良いことずくめのトマトなのです。
トマトジュースの味覚を吟味する[トマトセンサリーパネル]
専門の官能検査員[トマトセンサリーパネル]
により、厳しく吟味されます。
「最後にもう一つ、『夏しぼり』をはじめトマトジュースを長くご愛飲いただくためには、常に安定的な味覚品質を維持し続けることも重要になります。そのための専門チームがカゴメには存在します。それが[トマトセンサリーパネル]です」。
実は山﨑さんもトマトセンサリーパネルの資格を取得しているとのこと。具体的にはどんな仕事をしているのでしょう?
「トマトセンサリーパネルとは、人間の感覚(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚など)を用いて製品の品質を判定する検査員のこと。トマトジュースの微妙な味や香りの差(違い/個性)を認識する試験に合格することで認定される、カゴメ独自の資格をもつスペシャリスト集団です。
彼らは日々トレーニングを重ね、より敏感な感覚を磨いています。また、様々なトマトジュースの特徴を評価したり、そのおいしさの言語化にも取り組んでいます」。
ではその資格も持つ山﨑さん、今年の『夏しぼり』はどんな味になりそうですか?
それは飲んでいただいてのお楽しみ。
今年の『夏しぼり』にもご期待ください。
「今年も『夏しぼり』用のトマトは順調に育っているようです。トマトは農産物。『夏しぼり』も、その年に収穫されたトマトを搾った100%ジュースなので、年によって微妙に味は異なります。だからどんな味?と問われて表現するのは難しいですが、香りは爽やか、だけどしっかりコクがある。なのに飲み口はまろやか。つまり繊細かつ複雑な美味しさが一つにまとまった“旬”の味わい」。
まるでヴィンテージごとに味わいが異なるワインのような表現ですが、最後に山﨑さんおすすめの『夏しぼり』の飲み方について聞いてみました。
「私は冷やして飲むのが好きなんです。[ゆるしぼり]製法によって美味しいところだけを集めているので、『夏しぼり』はサラッとのどごしが良いのが特徴です。冷やしてお召し上がりいただくと、グリーン系の爽やかな香り、さらに甘味や旨味、程よい酸味など、トマトがもつ美味しさの全てが際立って感じられると思います。ぜひ一度、よく冷やして五感を集中して召し上がってみてください」。