はじまりは「苗」の提供から。
意外と知られていない事実ですが、『夏しぼり』をはじめとするトマトジュースに加工されるトマトの苗は、毎年カゴメから契約農家さんに提供されます。
ちなみにそのトマトは、ジュースに搾られて美味しさを発揮することを目指して、カゴメが開発した『凜々子(りりこ)®』というオリジナル品種です。
苗を畑に定植する際の注意事項や、その年の天候に応じた栽培の管理方法など、カゴメのフィールドパーソンと農家さんで綿密に打合せを重ね、トマトの栽培がスタートします。
特にここ数年は、猛暑であったり豪雨であったり、気候条件が毎年目まぐるしく変わる傾向にあります。フィールドパーソンは以後も足繁く畑を訪ね、トマトが真っ赤に熟し、収穫期を迎えるまで、農家さんと二人三脚で生育状況を見守っていきます。
トマトづくりは、土づくりから。
写真は6月上旬、茨城県のとある契約農家さんの畑です。6月といえば、太陽の光を浴びてトマトがすくすくと育つ時期。畑に「敷き藁(しきわら)」の準備をしている様子を写したものです。
梅雨時期の雨に備えて畑に藁を敷くのは、雑草の発生抑制、雨で土が跳ねあがるのを防止することが主な目的ですが、藁が徐々に分解されていき、肥料の補給源にもなるという、一挙両得とも言える効果が期待されます。
こうして『夏しぼり』に使われるトマトの栽培は、丹念に土づくりから始まっているのです。豊かな土壌が美味しいトマトを育みます。トマトが真っ赤に完熟するのは、まだこのあと2ヵ月くらい先のことになります。
「サンプリング」で“安全・安心”の徹底。
露地栽培は自然が相手。トマトが完熟期を迎えるまでには、予期せぬ事態が発生することも多々あります。特に近年、地球温暖化の影響で〈カメムシ〉の大量発生が、トマトだけでなく日本の農業全体の大きな問題になっています。
カメムシは農産物の生育を妨げるだけでなく、病気を引き起こすなど、多くの害を与える要因となります。カメムシの大量発生や病気が発生している状況では、農薬の使用はやむを得ません。
ただし、基準を超える量を使うことはできませんので、限られた使用量や回数で効果を上げる工夫が求められます。そのためには農薬の使い方がとても重要になります。そうした農薬の使い方についても、フィールドパーソンが的確に農家さんにアドバイスを行います。
そして畑を訪れた際には、無作為に生育中のトマトを採取する「サンプリング」も欠かしません。サンプルはカゴメの研究所に持ち帰り、[残留農薬検査]をはじめ、トマトの安全性を厳しくチェック。このように『夏しぼり』は、美味しさはもとより、お客様の安全・安心を第一に、土から徹底してつくられていくのです。
カゴメの「契約栽培」農家、岩崎さん。
カゴメは1899年の創業以来、安心・安全な原料を調達するために、トマトの「契約栽培」に取り組んでいます。日本の農業との共存共栄を図る契約栽培は、まず作付け前に農家の方々と全量を買い入れる契約を結びます。
契約栽培を行うことで、農家の方にとっては廃棄の無駄や価格変動という不安がなくなり、高品質の原料を作ることに専念できます。同時に高齢化する日本の農業就労者の中において、経験の浅い若手農家の育成にもつながります。
現在、岩崎さんのようなカゴメの契約農家さんは、日本全国に約480名。今日も炎天下の畑に立ち、丹念に美味しいトマトを育ててくださっているのです。
ちなみに岩崎さん、昭和28年(1953年)生まれの御年73歳。この地で五代続く農家の家に生まれ、お父さんの代には既にカゴメと契約を結んでくださっていたとのこと。ご本人も25歳から農業を始めたという“トマト栽培の達人”です。好きなことを尋ねると、「毎日トマトの顔色を伺うこと」とのお答えでした。
カゴメの「フィールドパーソン」、岸上さん。
“よい原料はよい畑から生まれる”という創業以来の信念を守るべく、カゴメには「フィールドパーソン」という、農業のプロフェッショナルが存在します。岸上さんもその貴重な戦力の一人。
フィールドパーソンは、カゴメの「野菜原料部」に所属し、担当する契約農家さんの畑を巡り、生育状況を一緒に確認しながら、栽培指導をしたり、農家さんからの質問に対して随時アドバイスを行うのが主な仕事です。
他にも、苗の納品、苗床から畑に植え付ける定植。担当地域ごとに開催される講習会や各種資料の作成。関連機関との打合せや調整等々、そのフィールドは畑の中に止まることなく、仕事内容も多岐に渡ります。
「農家さんの良きサポーター役でありたい」。
岸上さんはこう言います。「私たちにはトマトの栽培に関する専門知識のみが求められるように見えるかもしれませんが、実際には農家さんやその他関係者の方々の声を“聞く力”、それに対して“話す力”、さらなるトマトの品質向上に向けた“提案力”や時には“交渉力”も求められます。
農業は自然が相手。何が起こるか分かりません。私が生まれる前から農業に携わっておられる、岩崎さんのようなベテランの方でも、その対処法に悩まれる場面は多々あります。
私たちも日進月歩、進化する農業の知識や技術を修得し、でき得る限りのアドバイスはさせていただきますが、実際の栽培作業においては、農家さんと徹底的に話し合い、あくまでも良きサポーター役でありたいと考えています」。
二人のこぼれるような笑顔が信頼の証し。
岩崎さん、「カゴメさんのトマト栽培に関するマニュアルのようなものはありますが、猛暑日が続いたり、突然の豪雨に見舞われたり、特に昨今の気候不順な環境下では、マニュアル通りにいかないケースが多々発生します。そんな時、しっかり話を聞いてくれて、適宜適格なアドバイスをくれるフィールドパーソンの存在は、とても頼りになります」。
それに対して岸上さん、「苗を植えるのもトマトを育てるのも、収穫するまで実際に手を動かすのは農家さん。ですから農家さんがどうしたいのか、まずは聞くようにしています。もちろんカゴメとして守って欲しいことはしっかり伝えます。その上で農家さんの考えと自分の考えをすり合わせ、二人三脚のように歩んでいきたいと、いつも心がけています」。
炎天下の畑の中にあって、お二人のこぼれるような笑顔こそ、何よりも信頼の証し。今年30年目を迎える『夏しぼり』の原料となるトマトも、美味しく実りそうです。