長野県-南佐久郡・南牧村
大空に描かれた八ヶ岳の美しい稜線。 壮大な山々に抱かれるように一面に広がる畑。 標高が高く、太陽がいっぱいに降り注ぐ大地で 今夏もレタスが最盛期を迎えています。
避暑地として親しまれている八ヶ岳山麓の東側、南牧村。その野辺山高原一帯は、標高1300mという高冷地で、真夏でも30度を超えることはめったにない冷涼な気候です。そびえる山を目の前に思い切り深呼吸すれば、すがすがしい空気が体中を巡り、美しい自然の風景が心を穏やかにさせてくれるようです。この地こそ日本でも有数のレタス産地で、現在、JA長野八ヶ岳管内のレタス生産者は800名ほどいます。全国的にもこれほど多くの人数が栽培しているのは珍しく、夏秋レタスの収穫量は日本一。戦後から開拓に力が注がれ、夏は涼しく過ごしやすい高原ならではの気候を活かして、レタスはもちろん、白菜やキャベツなどの栽培も積極的に行われています。
レタスは、たっぷりの陽光を好む一方、夏の暑さや湿気にとても弱い野菜です。平野部の農家にとっては、栽培が難しい作物でした。ところが、八ヶ岳の夏は、日差しが強いのに気温は冷涼です。開拓者の方々は、この気候を利用しない手はないと活路を見出し、夏から秋にかけて収穫するレタスの栽培方法を築いていったのです。
「一年間のなかで一番日射量が多い時期に栽培できるため、ここのレタスは素直に葉が伸び、みずみずしくシャキシャキとした歯ざわりが特徴です」と野辺山生産者組織代表を務める青木雅徳さん。栽培の一番のポイントは、いかに梅雨を乗り切るかだったそうですが、昭和50年代に全面マルチングを採用したことにより収量を確保できるようになりました。マルチングとは地温を高めるために、ポリエチレンで畑を被うことです。通常、畝ごとに被うのですが、ここでは作付けする畑の全面に被覆します。「全面マルチ栽培によって、雨が降っても泥がレタスにつかず病気にならなくなった。レタスは雨に弱いだよね。あと、昔は草の処理がそりゃあ大変だったけど余計な草が生えなくなったんだ」。青木さんは時期に合わせて5品種のレタスを栽培されているのですが、一番時期が早いものでは4月上旬に種を蒔き、5月中旬に収穫。遅いものでは10月に収穫するものもあります。冬場は雪で作業ができないため、春先から秋までは品種ごとに生育状況が異なる畑を見回り、休みなく作業が続けられるのです。
夏場の最盛期は朝5時から夕方まで、腰をかがめての収穫作業に追われます。「いくらこの辺りが涼しいって言っても直射日光が当たるとあちーやねえ。でも晴れた日、八ヶ岳が見えると本当に気持ちいいもんだよ」と青木さん。「レタスの甘みを出すには、よく発酵した堆肥をたくさん入れた土壌にすること。もちろん見た目も大事だから1玉1玉なるべく大きさをそろえるようにする。そのために、株と株の間は27cm、畝と畝の間は45cmと、細かな数値も決まっているだよ」。この基準を超えると扱いにくい大玉になり、株間を小さくしてしまうと、逆に玉が密集してうまく育たないのです。
「作物育てるのって本当に奥が深いだよ。山の天気は変わりやすいから気候も大きく関係するし。まあでも、いいもんができたときの充実感はたまらんもんだよ」。18歳のときから農業に従事し、今年で36年目を迎える青木さんは、山の天気に翻弄されながら幾度も失敗を重ねたこともあるそうです。でも、粘り強く大自然とレタスに向き合ってきたこの地の生産者の方々。その皆さんが育てるレタスには、格別のおいしさが生まれていました。






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