全国野菜&果物マップ

日本全国で育っている、旬の野菜・果物を
季節別でご紹介します。

さくらんぼ

山形県-東根市

さくらんぼを
鉄道で遠くの人にも

さくらんぼ。とても繊細で傷みやすい果実ですがその昔「このおいしさを全国の人に届けたい」と 品種改良に挑んだ翁がいました。今回はその翁のふるさと、そして日本一の産地である山形県東根市を訪ねました。

日持ちがする品種を

 日本にさくらんぼが導入されたのは明治初期。雨に当たると実が割れるという弱点があり、その栽培が各地で失敗していた中、霜や雨の影響が少ない山形県だけが栽培に成功していました。明治後期、家業を廃業した東根の佐藤栄助(さとうえいすけ)氏は、家屋敷を整理し、心機一転、さくらんぼ栽培に挑んだのです。その頃ちょうど東根には「鉄道」が通り、関東との間でモノや人の行き来が盛んになりつつありました。「東根のさくらんぼを、鉄道で関東の人たちにも届けられないか」。そう考えた翁は、食味のよい品種に日持ちする品種をかけ合わせ、新しい品種づくりを目指しました。16年にわたる試行錯誤を経て新品種の結実を見たのは大正11年。これが、現在、日本のさくらんぼの約7割を占める「佐藤錦」なのです。

先人たちの知恵を

 「俺たちは、先人たちの知恵を真似して、そして学ぶんだ」というのは、栽培歴約30年の武田正春(たけだ まさはる)さんです。栄養が行き渡る樹形のつくり方も、甘さのために最適な葉の枚数も、先代を真似しながら毎年学んできました。
 さくらんぼの花が咲くのは、桜の花が終わる頃。きめ細かな管理のもとで白い花が満開になると、一気に受粉作業です。さくらんぼは、他品種の花粉でなければ実を結ばないため、数本おきに「受粉樹」が植えられています。マメコバチに樹の間を行き来してもらいながら、花粉がつきやすい水鳥の羽毛を使った毛バタキで花粉をつけていきます。「成果がちゃんと出るだろうか」。花びらが落ちる頃になると、果実になる子房部分が気になり、1日に何度も覗くんだと武田さんは教えてくれました。

葉が甘みをつくる

 無事に子房がふくらみ始めると、すぐに葉摘み作業。1万個以上も実る果実すべてに光を当てるために葉を摘み取ります。「でも葉が甘みをつくる。だからやたらめったら取ってはならね」。そこが熟練農家の腕の見せ所。先代から受け継いだ秘伝の計算式がしっかり頭の中にあるのだそうです。また、6m以上の高さに登って、頂上の葉も摘み取ります。「もっさり育った葉が地面を隠してしまうから怖えんだ」と笑わせてくれました。開花から約2ヵ月で収穫。収穫の3週間ほど前には、果実を守るために雨よけハウスが掛けられます。真っ赤に輝く果実が揺れる様を見て安心するのも束の間、収穫は果実に熱がこもらない朝4時から、毎日行われます。

収穫後も大切

 収穫が終わるとハウスが外されます。「戦いはそっからよ」。翌年のために、肥料と最低限の農薬を施します。この世話をしっかりしないと、翌年の果実が害虫でやられてしまうため、JAの方々と綿密に打ち合せを行って作業します。そして果樹は冬、外気の中で過ごします。山形の厳しい寒さが樹を熟睡させ、春に果実をつける元気を養います。「一番繊細な時期にハウスがあることで、雨がよけられ、肥料や農薬も最小限に留めることができる。けれども、やっぱり、大事なときはちゃんと自然の中で過ごさねばよい果実はできねんだ」。
 並々ならぬ努力で、全国の人に親しまれるさくらんぼを開発した東根の先人。その努力を無にしてはならないと、平成の今、その知恵のみならず「情熱」をしっかり受け継ぐ生産者の姿がそこにはありました。

山形県東根市の地図
山形県東根市
  • さくらんぼの実
  • さくらんぼの花を受粉するマメコバチ
  • 水鳥の羽毛の毛ばたき
    花粉がつきやすい水鳥の羽毛を使った毛バタキで花粉をつけていきます。
  • 仲睦まじい武田さん夫妻
    仲睦まじい武田さん夫妻。

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