山形県天童で「蜜しぼり」用のりんごを育てている熱心な生産者。奥様とお二人で、「ふじ」「王林」の他に「つがる」などのりんご、さくらんぼも栽培されています。
りんごの産地といえば、青森や山形、長野などが有名です。特に山形は太陽をたっぷり浴びたりんごの極上の甘みを追求し、無袋栽培を全国に先駆けて行った特別な産地として知られています。
なかでも、「蜜しぼり」に使われるりんごを栽培する山形県天童は、ひときわおいしい果物が実る「フルーツ王国」と呼ばれています。天童は、蔵王山や船形山などに囲まれた盆地で、昼夜の寒暖差が大きい内陸性気候が特徴。太平洋側の地域よりも日照時間が長く、良質なりんごが育つ条件が整っています。
「昼間に太陽の光をたっぷり浴びて甘みを蓄えたりんごの果実を、夜の冷たい空気がぎゅっと引き締める。その繰り返しが、他にはない格別なおいしさと甘みを作るんだよ」と話すのは35年以上もりんご栽培を続ける大ベテランの後藤武彦さん。一生懸命、愛情をかけてりんごを育てている熱心な農家さんです。
秋の収穫に向けて、今年も年明け頃から寒さの厳しい園地で、日当たりと風通しを良くするために枝を切り、樹形を整える剪定作業がはじまりました。
「今年は、例年より寒く降雪量も多かったので、冬を通して行う剪定作業は大変だったよ。毎年、剪定ではどのように枝を切れば、玉がきれいに揃うか試行錯誤してる。今でも勉強することばかりだね」と後藤さん。りんご作りに真摯に取り組む姿がありました。
春になり、剪定を終えた樹に花が咲くと、今度は密集してついた花の中央花だけを残し、養分の分散を防ぐ摘花を行います。おいしいりんごを育てるために、後藤さんは広い園地に連なるりんごの樹に咲いた花を一つひとつ手作業で根気よく摘み取っていきました。
8月から9月は作物に被害をもたらす台風の発生数が多くなります。
「台風が来ると、奥羽山系から南東のすさまじい風が吹くんだ。2年前の台風では、強風のせいで園地のりんごがほとんど落ちてしまった。でも、大切に育てたりんごを守ってやりたいから、樹形を低く整えたり、枝が折れないように支柱を立てたり、できる限りの対策は立てているよ」と、苦い経験にくじけそうになりながらも、前向きに工夫と努力を重ねる後藤さん。
幸い今年のりんごは、天候にとても恵まれ、順調な生長ぶりがうかがえます。お盆前にはほどよい雨も降り、果実は大きく元気に実っています。
10月に入ると、「ふじ」を真っ赤に色づけるための作業を行います。地面に銀色のシートを敷き、色づきにくいおしりの部分まで太陽光を反射させるのです。また、果実の向きを変えて、まんべんなく光を当てる「玉まわし」も行います。
「ここまで丁寧にりんごを育てているのは日本だけ。手間をかける分、外国産のりんごとはおいしさが違うと思うよ」と後藤さんは自信を持って話してくれました。
こうして、いくつも手間をかけた果実が色鮮やかに完熟すると、いよいよ収穫の時期。
「やっぱり収穫の時が一番うれしいね。今年は、春先の温暖な気候で、開花時期が早かったから糖分がよくのってる。甘みをたっぷり閉じこめた、最高においしいりんごになるよ」と後藤さんから笑顔がこぼれました。
一つずつ大切に育てられたりんごそのままのおいしさが味わえる「蜜しぼり」。どうぞ、楽しみにお待ちください。

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